『昔の記事から9』
   2016年12月22日の記事です。  ~全国民罪状希望~  人口減少は止まる事を知らなかった。  VR元年と呼ばれた2016年から10年でその技術は一般的な物となり、新たな法律も出来上がった。  『VR禁固刑』  地下に作られた巨大施設で、VR装置を装着させられた犯罪者達はその仮想世界の中で生きて行く刑罰。ただし、その間の様子は全国ネットで放映され続ける。  性犯罪者は仮想世界の中で好きなだけ強姦も可能。  殺人犯は仮想世界の中で好きなだけ人を殺す。  釈放後の再犯率は一気に低下するものだと思っていたが、実際は違った。  ネット放映が始まるや、初めの半年、犯罪者達は嘲笑の的だった。犯罪者がにやにやと恍惚の笑みを浮かべながら腰を振る性犯罪者。  誰もいないところに向かって拳を振る殺人犯。  様々な犯罪者が各々の罪を語るように醜態を晒していたのだが、徐々に放映を観る人はいなくなった。  明らかに、そっちの方が楽しそうだと思ったのだ。  眠い目をこすりながら出勤する自分。  先生にどやされながらも必死に部活に励む学生。  その一方で、地下に閉じ込められていても、自分の好きな事が出来る天国のような世界で暮らす犯罪者達。  差は歴然であり、次第に自ら罪を犯して地下に行こうというものが増えた。日に日に激増する欲望のタガが外れた国民に、ついに地下の収容所が限界を迎えた。  地下で暮らすとある犯罪者が、ふとVR装置を外して見えた現実の世界は、阿鼻叫喚そのものだった。  どの罪人も皆平等に、暴力という行為にさらされている。  誰もVR装置などは装着していなかった。一人二人とぶつかって壊れたのをきっかけに、夢の世界から現実に帰した相手に、暴力という方法で仕返ししたのだ。その一連の流れが感染したように広がって行った。  男は天井を見上げた。上空何メートルかもわからない施設で、そこに蜘蛛の糸などは無かった。誰も救い上げようとする者はいないのだ。  救うどころか、ここには監視員すらいない。一体いつからだろうか。そもそも、一体何日経っているのだろうか。  腕は少し痩せ細った気がする。髭も伸びている。  出口など見えない。あるのは、無数の人の姿と転がったヘッドギアくらいだ。  天国だと思っていた。その為にわざわざここに来た。良心を痛めてまで女子高生を誘拐して散々犯し、これでもかと罪を重ねて自首し、ここに来たと言うのに。  良心などそもそも彼には──彼らには無かった。  良心のある者が罪を犯して楽園に向かおうなど思うはずが無いのだから。 ヘッドギアを被り直そうとした時、彼もまた、暴力と言う名の渦に巻き込まれて行った。    これは、最近話題のVRと大学生の強姦事件からイメージしたものですね。  前回から、即興劇をここでもやろうと思って始めてます。  とのことです。 2018/02/11 NEXT→11ページ目