『20170311~即興劇『ある夏』~』
 小中高という長い付き合いの英治との思い出話で必ず話題に上がるのは、後に『良太の乱』と呼ばれる事件に発展した中学三年生の夏の事だ。  俺と英治。そしてその当時は良太と潤の二人を加えた四人で遊ぶ事が多かった。  夏休みのあの日も例に漏れず、四人で学校の近くにある神社にたむろってどうでもいい話を延々と続けていた。  御堂の裏に用を足しに行った潤が慌てて帰って来る。凄いものを見つけたと言うから何があったのかと勿論全員が目を輝かせて駆けた。  呼ばれた三人の目に飛び込んだのは四枚のDVDのパッケージだった。  潤が嬉々として中身を確認すると、全部中身はあった。  その行動を俺たちはただ呆然と見ているしか無かった。手を出そうにも、さすがに残り三人の目が怖かったのだ。 「これどうする?」  まるでこのままここに置いておくという選択肢は無いように、潤は俺たちを見る。  勿論、思春期真っ只中の男子が観たいものではあった。興味だってあった。保健の授業のその先がDVDにはあるのだから。  四枚を四人で回すとなると、じゃあ誰が最初に借りるかという問題が起きる。普通に考えれば見つけた潤から借りるのが妥当なのかもしれないが、本人含め、この僥倖にそんな発想は誰にも無かった。如何に理由を付けて自分が最初に借りるかが重要なのだ。  どう考えても汚れてしまうように思えて。  とりあえず俺たちはその四枚を持ち、クーラーのある英治の部屋に向かった。ここなら誰の目も気にせず会議が出来るから。  四枚の内訳はこうだった。  一、アニメ系。  二、素人女教師。  三、ロリ系。  四、ギャルのお姉さん(当時比)  成人からすればロリコンと言われてしまうような女性がパッケージに写っている三番。ただ、中学三年生の俺たちからすればそれは同学年の裸体と言っても良いだろう。  ポツリと声を漏らしたのは英治だった。三番を指して言うのだ。 「これ裏だな」 「裏?」  と潤が尋ねる。 「裏モノって事だよ。明らかに未成年だし。法的にはアウトだから裏モノ。一般じゃ手に入らない」 「じゃあこの人はどうやって手に入れたんだ?」 「ネットだろ。で、どうする?」  これはレア物だからこれを選ぶべきだ。とでも言うような情報提供と催促だった。  何故当時の四人が膠着状態を続けていたかというと、自分の性癖を暴露してしまう事になるからだ。思春期真っ只中の男子にとっては死活問題だ。  だから四枚まとめて借りる事によってそれをカモフラージュ出来るという算段が四人共に出来ていた。  ただ、ラチが明かない。このまま時間だけが過ぎて行くのは実に無駄だと思っていた。 「くじ引きは?」  と、同じくうんざりしていそうに良太が言った。だが、それでは興味の無いものが来た場合に不満が出る。だから即座に却下された。 「とりあえず借りたいもの決まってるなら指名しないか?」  俺はそんなありえない提案をしてみた。策を練ったのだ。巧妙に自分の借りたい物を借りる事が出来る策を。  誰も反応しない場に、俺は更に付け加える。 「無記名でやるんだ。被らなければそれで済むだろ?」  確かに、と英治の相槌が聞こえて立ち上がったかと思うと机からメモ用紙を破って配った。 「どれが良いか書いて折ってこの箱に入れよう」  英治がお菓子の空き箱をテーブルに置くと、四人がそれぞれ借りたいものを書いた。  俺は三番と書いた。英治が勧めたからこそそこに乗ったという形でカモフラージュが出来た。本願には誰もいない事を祈りながら。  四人が往々に箱に入れた紙をかき混ぜ、英治が開票していく。アニメ系に一人。ギャルに一人、ロリコンものに一人。本願は無傷を保ったのだ 「じゃあ、誰もいないから俺はこれで良いや。それならみんな希望通りに回るし」  俺は意気揚々とDVDに手を伸ばす。敗者になる事で真の勝者となり、場を納めた勇者となったのだ。  それぞれが家に帰り、観たのかは知らない。ただ、俺たちの間でDVDが回る事は無かった。  良太が親にバレたのだ。そういった事には滅法厳しい親だとは聞いていたが、実際に没収されたのだ。更に、他の三人の名前を出した事により各家庭に連絡が回り、良太の母は四枚のDVDを回収したのだ。  持ち帰り丸一日も立たない間の話だった。  俺たちは良太に『裏切り者』のレッテルを貼り、仲間外れにした。その理由がAVを持っていた事をチクったからというのが後から考えればしょうもない話で、子供だと笑えた。  その良太が反乱を起こしたのが夏休み明けに開催された文化祭だった。奴は開催式の最中、全校生徒の集まる体育館のステージに乱入し、俺たち三人がどのAVを選んだのかを暴露したのだ。思春期の少年達には致命傷だ。体育館中で爆笑嘲笑の声が浴びせられた俺たち三人と良太は担任に呼ばれてこっぴどくしかられた。  文化祭が終わった放課後、良太は病院に運ばれてそれから不登校になった。憤慨した英治が暴行三昧だったのだ。 「紘斗ならまだしもお前がバカにしてんじゃねえよ」  別れ際に吐き捨てたその言葉に、少なからず俺は嬉しさと安堵を覚えた。鼻からも口からも血を流して手の指が変な曲がり方をして倒れている良太。俺はそんな風にはならないのだと確信したから。  『良太の乱』の影響は冬にはもう無くなった。本人が学校に来なくなった事により、クラスの中では徐々に『林田良太』の存在自体が消えて行ったのだった。  しかし、その夏に起きた事件は俺だけはまだ終わらなかった。  ただ一人観た『素人高校教師』の映像。画面の中にいた女性が高校の担任として現れたのだ。  綺麗なスーツ姿で入学式に臨む先生。親やすくて生徒からもすぐに受け入れられた先生。ただ、教室の中で俺だけがそんな先生の服の中身を知っている。  左の内太腿と右の乳房にあるホクロは誰も知る事が出来ない。なんていう優越感とは程遠い感情が俺を襲い続けた三年間だった。  真面目で生徒にも対等に接してくれる先生は、男二人を相手にニコニコと笑みを浮かべて、快感に嬌声を上げる。なんならケツの穴まで観ている。そこに腹の出たおっさんのブツが入れられて喜ぶ様も知っている。  それでもこうしているのだから当時の俺にはどうにも我慢ならなかったらしく、担任の授業になれば必ず吐き気が催して授業の成績は悲惨なものだった。  そんな事があったせいか二十六歳の今でも好きな女の子とそんな関係になれた事は無い。  まるで動物のような姿にしてしまう事が許せないのだ。  はい、これは即興劇ですが、『JAM』の中から抜粋です。  自分でもたまに思うんですよね、SEXの動物感。      あと、ブラックラグーン全部観終わりました。いやぁ~、面白かった。原作も再開するようだしまたやって欲しいですね。  何かオススメのアニメがあれば教えて欲しいです。  追記。  『JAM』の一部と言ってますけど、JAMってもっと別の話のはずなんですけどねぇ……変わったのかなぁ……(他人事のようだ笑) 2018/02/11 NEXT→20ページ目